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マチネの終わりに 感想とお気に入り表現

マチネの終わりに 作 平野啓一郎

 

本を読み終わったら映画を見ようと思っていてとりあえずやっと読み終えたので感想を書く。

自分は読むの早い方だが展開がかなり遅くて読むのに半年もかかってしまった。

 

 あらすじ

この小説は大人の男女がコンサートの楽屋挨拶をきっかけに惹かれあい、離れて、惹かれるという恋愛小説である。

そこには互いの生活や仕事、心情が渦巻き、小説途中の衝撃の出来事により2人は呆気なく引き裂かれてしまう。

しかしお互いが遠くに行っても相手を忘れられず新たな道へ進んでいても長い時を経て、、、

 

感想

物語はいい終わり方だったが正直これがベストセラーなんだ、、へえ、、という感じになった。しかし今現代の情勢を背景にした恋愛もので現実味があり読んでて想像しやすかった。例えばスカイプとかブログとか病気の名前とか。ネットなどの国際交流を交えていたのが小説と親近感を持たせた。

 

この方をよく知らなかったのだが文章表現が細やかで素敵だなと感じた。

ここで私が気に入った表現5つ紹介する。

 

時々、野菜中心

 

この表現に心ぶち抜かれた。思いつきそうで思いつかなかった。

そのあとの文で菜食主義ではないが野菜中心にすることで体調を管理して彼女が普段どういう生活を送っているのかの垣根を見た気がする。とあった。いちいち文章で説明するよりも端的で(あとは読んで欲しいが)だから「時々、野菜中心」なのだと理解した

 

よく心や表情が固かったり閉じこもっている時に使われる表現は「殻に閉じこもっているように」と表現されることが多いが、小説後半の文中に「コルセット風の顔に閉じこもって」と表現されている。

 

コルセット、、!たしかに硬いから殻よりも硬さを想像できるなと感じた。殻というどの殻かわからない表現よりもコルセットという表現にも現代味を感じた。

 

 ③

ヒロインである女性、洋子が離婚を仕事仲間に打ち明けたシーンで

おめでとう、また新しい人生が始まるよ

と返したシーン。私や多くの日本人ならば「これからどうするの?」や「残念だったね、原因は?」など深く聞いてしまうイメージがあった。洋子がジャーナリストとして仕事をしていて海外の人の仲間に告げたあとのこの反応は洋子自身も心が軽くなったはずだし実際言われたら私もうれしい。第一声におめでとうだなんて出てこないなと思った。

 

「人は変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど実際は未来は常に過去を変えているんです。変えられるともいえるし変わってしまうともいえる。過去はそれくらい繊細で感じやすいものじゃないですか?」

 

のちに洋子と父親が再会するシーンでつながってくるので読んでない人はぜひ読んでほしい。しかしこの文は小説の中だけでなく小説を読んだ人にも読んでいない人にも通ずる話ではないか。私の場合、辛い過去は自分の中で無かったことにしてしまうし、頭の片隅に二重鍵で掛けるくらいあまり言いたくないし理解されなくてもいいやとも思っている。もしその過去を実はねあのとき、、という風に打ち明けられてある意味誤解が解ける事象ならば二重から単体の鍵に変化するくらいに変わるし変わった過去のまま生きていくことができるかもしれないしもしくはその逆かもしれない。そういう過去を変えるような出来事が起きていく未来へ進むためには過去をたまには思い出すのはつらいことではあるが非常に重要なことかもしれない。

 

長いので短く訳す

「インターネットのような便利なものが登場してそのおかげで遠くの人とも顔を見ながら会話ができて心を通わすことができるようになった。その一方で悪用することもできる。コミュニケーションも自己目的化されたシステムの中で起きる。予測可能な些細なトラブルに過ぎなくて人の心が傷ついたり関係が絶たれようともシステム存続には影響を及ぼさない。幸不幸を誰のおかげで誰のせいだって考えても途方にくれてしまう、

、」

 

世界のさまざまなシステムが自動化していてその中にコミュニケーションも含まれていてコミュニケーション単体で考えると進んでいくものだから幸か不幸かは今の時代誰も責めることはできない。この考えは現代ならではだしもし自分がそれは画面を通してなのかコミュニケーションを通じてなのかどちらかで傷ついた場合、そのやるせなさは一体どうすればよいのだろう。誰も傷つけないシステムでもありかつ自分を苦しめるシステムとして考えられる。コミュニケーションって単純で複雑だと感じた。これは読む人にとって解釈が分かれそう。

 

 

マチネの終わりにの気に入った表現5つを紹介しました。長かったので映画見るのを個人的にはおススメしますが小説の細やかな現代描写はぜひ読んでもらいたいとも思っています

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